
今回は、お薬手帳の誕生秘話について紹介させていただきます。
そもそもお薬手帳って何のために存在しているのか、皆さんはご存知でしょうか。
・・・と偉そうに書いておりますが、何のために存在しているのかは医療従事者として心得てはいますが、お薬手帳がいつ誕生したのか、そもそもどういった経緯で導入されたのか知らないんですよね(笑)
ってことで、いつも貰っているお薬手帳は何がきっかけで生まれたのか、ガッツリ調べてみました。
結論から申し上げますと、薬の飲み合わせによる死亡事件(ソリブシン薬害事件)がきっかけで導入されたんですね。

1993年(平成5年)、別々の病院から帯状疱疹の薬(ソリブシン)と抗がん剤が処方され、併用服用したことによる副作用により、ソリブシンが販売されてわずか2ヶ月の間に15名が死亡しました。
事件が明らかになるまでの流れを、要点をかいつまんでお話すると、
1)ソリブジンとフルオロウラシル系の抗がん剤の併用服用が危険なのを、発売元は知っていた。
2)臨床試験の段階で、抗がん剤を服用していた3名が死亡していた。
3)ソリブシンの添付文書(薬の取扱説明書)には、「抗がん剤との併用を避けること」と書かれてはいたが、控えめな記載だった。
そして、被害が発生・拡大した要因として、
1)1993年当時、がんは非告知が主流だったこと、そしてがん患者は自分が抗がん剤を内服していることを知らないため、皮膚科等の医師も患者も併用を回避できなかった。
2)帯状疱疹は「皮膚科」、がんは「内科」のように複数の診療科にまたがり、同一病院内での受診であればまだしも、今回の事件は、患者がそれぞれ別の病院で受診したことにより併用に気づけず、重篤な副作用が発生した。
また、1993年当時は、大半が病院内で投薬されていたため、複数の医療機関で個別に処方される薬の相互作用チェックが事実上困難でした。
相互作用とは…
“数種類の薬をいろいろと飲み合わせた時や、食べ物と薬の取り合わせが悪い時に起こる薬の副作用の増加(薬の副作用が強まったり)や薬の効果の減少(薬の効果が弱まったり)などの現象をさします。”
上記のことから分かるように、併用を防ぎ得たか考えると非常に困難だったわけですね。
ソリブシン薬害事件をきっかけに、このような事件を二度と起こすまいとして健康被害から患者を護るために誕生したのが、「お薬手帳」なわけであります。
薬剤師が「お薬手帳を必ず持ってきて下さい」「今回処方されたお薬以外で服用している薬はありませんか?」と聞くのは、こういう背景があったからなんですね。
たとえば一見関係ないような「目薬と飲み薬」でも副作用が起こり死亡した例もあるので、ご自身の命、ご家族の命を守るためにも、必ずお薬手帳は携帯し、処方薬以外で服用している薬、健康食品、サプリメントがあれば必ず薬剤師・医師に申告してください。
もし飲み合わせで不安がある場合は、飲む前にかかりつけのタケシタにお問い合わせください。
【出展・引用・参考・参照】
藤原由佳."2018年6月号お薬手帳".新百合ヶ丘総合病院.2019-12-19. http://www.shinyuri-hospital.com/column/co-medical/column_pharm_201806.html ,(参照2020-03-17).
京都コムファ."薬害根絶デー…主な薬害について".2019-8-13. https://www.kyoto-compha.or.jp/use-blog/2019/08/20190813112828.html ,(参照2020-03-17).
高田寛治."ちょっと教えて・薬Q2:薬の飲み合わせが悪いと死亡する?".日本臨床薬理学会.2016-12-15. https://www.jscpt.jp/ippan/chotto/k_q02.html ,(参照2020-03-17).
山崎浩史."ソリブジンの遺したもの(ファルマシア49巻11号p.1106,2013年)".J-STAGE.2016-09-26. https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/49/11/49_KJ00010068521/_pdf ,(参照2020-03-17).
全日本民医連."くすりの話 薬と薬の飲み合わせ".1997-1-1. https://www.min-iren.gr.jp/?p=27222 ,(参照2020-03-17).
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